■第一席 なぜに「萌え落語」なのか?
なぜ二次元作品と落語のコラボレーションをしようと思ったのか。
ほら、最近「落語ブーム」なんて言って、若い人たちの間で落語が注目されているなんていいますが、本当にそう思いますか?
実際寄席に行ってみると分かりますが、確かに若い人はそこそこ多いんですが、大概20代後半から30代前半の女性で、男性は数えるほどってくらいです。
で、この女性たちは本当に落語が好きで来ているのか。まずそこが疑問なのです。
話芸としての落語や登場人物、江戸の生活や人情に本当に興味があるのか?
私が思うに、アイドルや韓流スターを追っかけるのと同じノリのような気がします。
近年落語をテーマにしたドラマや映画が多いからですね。表面的にちやほやされてるだけな気がします。
歌舞伎役者や大相撲の力士相手でもそうですが、やはり単なる「追っかけ」が多いんですよ。
いや、もちろん、その年代の女性の中にだって本当に落語が好きで好きで仕方ない人もいるでしょう。
でも、それはごく一部で、若い女性の「自称」落語ファンのうち、果たしてこの先何十年と落語を愛し続けるかというと甚だ疑問です。
ですから、落語ファンの裾野を拡げようと、若くかつ幅広い年齢層で、好きなものには投資と情熱を惜しまない人たちに、落語へ興味を向けてもらおうと思うわけです。
それはどういう人たちか。そう、いわゆるヲタクの人たちです。
何せ私もヲタクですからよく分かります。
落語の持つストーリー性とキャラクター性、そして適度な長さとテンポのよさは、現代のアニメやドラマCD、そしてライトノベルなどと共通する部分があると思うのです。
例えば与太郎、ご隠居、若旦那といった、固有名詞なのだけれど特定個人を表すわけではない、いわゆる「肩書き」に近いキャラ性は、昨今の二次元作品における属性「幼馴染み」「委員長」「ツンデレ」といったカテゴライズによく似ています。
そこで、まずは既存の作品のキャラクターで落語をやってみよう、と。
といっても江戸の世界観に二次元キャラを持っていくと「落語天女おゆい」になってしまうので(笑)、あくまで古典落語のストーリーの骨子をベースに原作の世界観で噺を書いてみようと思いまして。
そして、そこを入口に本物の落語にも興味を持ってもらえたら、って思うんです。
古典だけでなく、若いセンスで新作落語を作って爆笑を取っている若手の落語家さんもいますしね。
…まあ、それが「萌え落語」を作ろうと思ったきっかけです。