アイドルマスター萌え落語
「酢ケーキ」


「美希、ちょっと、美希、起きなさいよ。よく寝られるわねぇ、この日なたで…私なんか暑くってめまいがしそうよ、ちょっと、美希…神経がないんじゃないのもしかして.美希、美希ってば!」
「ん…んあぁぁぁぁぁ…む、むあぁ…あふぅ」
「やっと起きた………え、何?」
「あふぅ、暑いの……あっつ〜ぃっ! こう暑くっちゃ、とても寝てられないの」
「ウソつけっ! あなた今、ぐっすり寝てたんだよ? それはいいけど、今、雪歩の提案で日本茶パーティーをしようって、みんなさっきから準備でしてるんだよ。美希だけだよ、寝てるのは。邪魔になるからいったんどこかへ行ってて。それと顔を洗ってきなね。…よし、美希、片付いたよ。うん、流しに湯呑みが洗ってあるでしょ、それこっちへ出して。ああ、ここへ置いといて。そいで、と、お茶はどうなった? やよいがスーパー行って、たくさん買ってきた? いいねぇ。それからね、表にちょっと水を打っといた方がいいよ。風が涼しくなるから。あまりたくさん撒かないでね、後で苦情が来るから、いい? よし、じゃあみんなこっちへ集まって。実はちょっとみんなで考えてもらいたいことがあるの。お茶は今聞いた通り、やよいが調達してくれたよ。飲むんなら湯呑みも出したし、いつでも飲めるの。ただ、お茶請けがないのよ。別にスーパーで売ってるような安いお菓子でもいいんだけど、せっかくだからねぇ? 何か美味しいものを、ね? なんでもいいのよ、なんでもいいから、ちょっと話が弾むようなものが欲しいのよ。ところが、よ。お金があったらそれぞれ好きなものを言えばいいんだけどね。だけど、うちの事務所のことだから、お金ないでしょ? ね、懐が寂しいんだから、お金がかからなくて何かイケてるお茶請けを考えて欲しいんだけど、何かない?」
「そういうことなら、はるるーん」
「お、亜美、何かある?」
「あるよぉ。亜美はぁ、世の中にこんないいお茶請けはないんじゃぁないかというようなものを知ってるよぉ」
「何?」
「木久蔵ラーメン」
「え?」
「木久蔵ラーメンだよぉ。これはいいよぉ。どんなに食べても在庫は余ってるし、こんないいものはありませんよぉ」
「…帰っていいわよもう。…私はお茶請けをって言ってるの! どこの世界に木久蔵ラーメンお茶請けにしてお茶飲む人がいるのよ! …真美は何かない?」
「それじゃあ、金沢名物金箔ラーメン」
「どうしてそうなるの。みんな私の言ったことを聞いてる? お金が無いんだよ、無いところでなんとか考えてって言ったのよ。じゃ、もう少し分かりやすく言うわよ。まず、安くなきゃいけない。それで、こっちの人が食べられてこっちの人の口に入らないっていうとケンカになるでしょ、だから数が無くっちゃいけない。それでさ、見た目にも何か美味しそうで、お腹にたまらなくって、衛生にいい、なんてイケてるお茶請けが無いか考えてって言ってるのよ」
「はい、はーいっ!」
「はい、やよい」
「こんなのはどうですか? ………楊枝を買ってくるんです。それで、その楊枝を一本づつ配って、楊枝でこう口をつつきながらお茶を飲むっていうのは、どうですか?」
「お茶請けは?」
「お茶請けはその楊枝です」
「楊枝がどうしてお茶請けになるの」
「どうして、って今春香さんが言った通りですよ。安くて数があります、で、楊枝でつつきながらお茶請けを飲んでれば、表を通る人にはなにか美味しいもので一服やってるように見えちゃいます。で、お腹にたまらないし、衛生にいいです」
「何よそれ! 歯の掃除をしながらお茶が飲めるわけないでしょ! もう、どうして私の言うことがわかんないかなぁ? なるほど、これはいい、ってお茶請けが何かあるもんだよ、考えて…もうちょっと考えてよ」
「うるさいわねぇ、人に頼ってばっかりいないで、自分でも少しは考えてみなさいよ春香。あるわよ、お茶請けくらい…。社長室の隅に、社長秘蔵のぬかみそ桶があるのよ実は。あの中にずずーっと腕を突っ込んでかき回してみたら、隅っこの方に忘れられちゃったようなナスの古漬けの二つや三つ、必ずあるものよ。これをとんとんとんとん、と刻んで。で、そのまんまじゃ臭っていけないから、だからこれをちょっとばかり水に泳がせるの。で、水から上げて刻みショウガと混ぜて、布巾でギューッと絞って、まあ好き好きで鰹節掛けてもいいし、醤油を垂らしてもいいし、これはいいお茶請けになるわよ? どう?」
「さすが律子さん! ね、き、聞いたみんな!? こ、これよ、私が聞きたかったのは……さすが苦労人、お金がかからなくていいお茶請けになるじゃない。恐れ入りました、さすがだよ。さ、それじゃさっそく古漬け出してきて下さい」
「ちょ、やめてよ…私が考えたのよ、出すのは他の人に出させなさいよ。戦だってそうじゃない。作戦を考える人と鉄砲持って走る人とは違うんだから」
「大袈裟な話になってきましたねぇ、どうも。いくらでもいますよ、兵隊は…。誰か出してきてくれない? ぬかみその中に手をつっこんで、古漬け……。みんな黙っちゃって…、端から聞いてくわよ。真、どう? 古漬け」
「へへっ、どうも恐縮です」
「いや、恐縮しなくていいから、古漬け出してよ」
「いや、だめなんだ……いや、嫌いなんて、嫌いなんてそんな生易しいもんじゃないんだよ。ほら、見てご覧。古漬けと聞いただけで、鳥肌が立っちゃったでしょ? つまりこれはぞっとしているってこと。聞いただけでぞっとする。これがぬかみそに手なんぞつっんこだ日には、ボクは死んじゃうよ」
「また始まった、真はいつも大袈裟なんだ……いいよ、頼まない。あずささん、どう?」
「いやぁ、だめなんですー。どんなことがあってもぬかみその中に手を入れちゃダメよって、ばっちゃが言ってましたー」
「そんな遺言がありますかっ! 雪歩はどう?」
「それがぁ、申し訳ないんですけどぉ、私のドリルはぁ、世の中のどんなに硬いものでも掘れるんですけど、ただひとつ、ぬかみそだけは掘れないんですぅ」
「斬鉄剣かっ! もうしょうがないわねぇ…どうしましょう律子さん」
「大丈夫よ。古漬け出るわよ」
「え? やっぱり律子さんが」
「いや、私が出すわけじゃないのよ。要はここに古漬けがふわふわふわっと出てくればいいんでしょ?」
「まあ、そりゃ出て来さえすれば、途中経過は問わないですけど…」
「私が出すわけじゃないの。まあ、私に任せて。ほら、ちょうど千早が今帰って来たでしょ? へへっ、私の独り舞台。みんな黙っててよ? お〜い! 千早、千早ーっ!」
「え? ……あ、みんな集まってるわね。何?」
「みんなで日本茶パーティーやるのよ。千早も付き合いな」
「いや、そうもしてられないの。これから仕事でちょっといかなきゃならないところがあるの」
「あ、そうか。無理強いしちゃいけないわね。分かったわ。また今度付き合って。けど、あんた、ずるいわよ。あんた一人だけモテちゃって。あんまり人を惑わすんじゃないわよ? 小鳥さんなんか、大変よ? 色よい返事をしてあげないと、長いことないわよ? あのまんま放っておくと、焦がれ死にしちゃうわよ! ちくしょう、ずるいなぁ、この女っ殺し! 事務員殺し! 色魔ーっ! 早く行けーっ! このちはぺったーんっ!」
「………こんにちわ」
「何よ、入って来やがったわね。仕事があるんじゃないの千早?」
「いや、同じ事務所の仲間じゃない。付き合いも大事よ。仕事なんて言ったってたかが知れてるのよ。…それより、さっき言ってたわね……音無さんが何て?」
「はっ、お安くないわよ? 全部知れてるのよ。二、三日前やけに暑かったでしょう?」
「ええ、確かに」
「もう暑くって暑くって。で、私はエアコンの前で涼んでたのよ。プロデューサーと話なんかしてさ、するとそこへ、買出しに出てた小鳥さんが戻ってきたのよ」
「うんうん、うんうんふんふん」
「で、話をしてたんだけどね、何だか知らないけどやたらと『千早ちゃんが、千早ちゃんが』と、あんたの名前ばっかり出てくるの。で、こっちは面白くないじゃない」
「あ、そう。…はは、ご同情申し上げます」
「何を言ってんのよ! 癪に障ったから言ってやったのよ。『あの、さっきから『千早ちゃんが、千早ちゃんが』ってぇやたらと千早の名前ばかり出て来るけど、ことによると小鳥さん、千早に気があるんじゃない』と、ポーンと言ってやったの」
「うんうんうんうんふんふんふん、ふんふん……そ、そ、そ、そそそれで?」
「ちょっと、そう前へ出てくるんじゃないわよ、暑苦しい……ま、普通の人なら、人前でそんな事言われたら真っ赤になって俯いちゃうわよ。ところが小鳥さんはそうじゃないのよ。『あら、律子ちゃん、私が千早ちゃんを好きになっちゃいけないの』と、ズドーン、とお返しが来たのよ!」
「はぁ……ふぁあは……はぁぁ」
「ちょっと、大丈夫? 声が裏返ってるわよ、しっかりしなさいよ……私は言ってやったのよ。『いけないことはないけど、どうしてあの洗濯板バージョン72なんですか』って。そうしたら、『あら律子ちゃん、女は胸じゃないのよ。胸なんてただの飾りなの。エロい人にはそれが分からないの』って、小鳥さんがそう言ってたわよ」
「そう、やっと私の魅力が(グスッ)認められて…ウウウッ」
「泣いてるわよこの子……今もみんなで千早の噂をしてたのよ。あんたこそトップアイドルだって」
「え? そう? 私が? トップアイドル? またそんな…、まあ、それほど、あるかもしれない、けど?」
「そこでね、そんなトップアイドルに、ここにいる一同が頭を下げて頼みたいことがあるのよ。ひとつ聞いてもらえないかしら」
「もうなんでも言って。レッスン合宿でもするの?」
「いや、そんなんじゃなくて」
「プロデューサーにプレゼントをあげるとか?」
「いや、そんなんじゃないの。あのね、ぬかみそ桶から古漬けを出してくれない?」
「……。さようなら。こら、ちょちょちょっと待って、引っ張らないで、引っ張らないでって、服が破れちゃうじゃない、離してよ、分かったわよ、ちょっと待ってよ………なんて悪い人なの、律子、あなたって人は…人をすっかりその気にさせといて…。あの、ぬかみそは勘弁してくれない? これから出かけるのよ、私は…。臭いが残っちゃってどうにもしょうがないじゃないの」
「だめよ。あれだけその気になっておいて。さ! トップアイドルの底力見せてもらおうじゃない」
「いや、それがね、今日は都合によりトップアイドルはお休みなの」
「何をマギー司郎みたいなことを! さぁ! ぬか漬け出しなさい!」
「嫌よ! 嫌だってそう言って……。わかったわよ、すっかりその気になった私も間抜けだったわ。じゃこうしましょう、古漬け買うだけのお金を私が出すから。それで勘弁して」
「ああ、それならいいわ。で、いくら出してくれるの?」
「あんまり高いことをいいっこなしよ? こ、こんなところでどう?」
「ほう、指を一本立てたわね。百万円か? 一千万円か」
「ちょっと、名古屋の結婚式じゃないのよ? もう、千円ってところで、どう?」
「千円? 千円ってのはちょっと少なすぎない? いや、この子が千円で手ぇ打ってくれって言うんだけどさ、どうする? 初犯だから勘弁してやるか……、お許しが出たわよ」
「それじゃ千円、ここへ置くわよ。じゃ、ちょっと私も混ぜて…」
「何を言ってんのよ、あんた、用があるんでしょ? 出すもの出したらとっとと行っちゃいなさい。消えろ、消えろ」
「そ、そんな酷いことを言わないでよ…分かったわよ、行くわよ。ったく、なんて人なの」
「あ、千早、そう言えば、高木社長がね」
「うるさい! もうその手は食わないわよっ!」
「はは、怒って行っちゃった。どうよみんな、これだけあればなんか買えるでしょ?」
「買えますよ。恐れ入りました。頭の働きってやつですね。…そう言えば真、さっき思い出したんだけど、昨日私が作って来たチーズケーキがあまってたでしょ。あれ、どうしたの? 亜美に預けた? 大丈夫かなぁ、ねぇ、亜美! 亜美、例のチーズケーキ、どうしたの? ちゃんと冷蔵庫に入れてある?」
「それがねはるるん、冷蔵庫壊れてたの」
「いやな事務所ねぇ……じゃあどこに入れたの?」
「うん、だから、ねずみに食べられないようにそこの棚に入れて、鍵掛けといたから大丈夫だよ」
「え? この棚の中ぁ? こんな暑い時期にこんな日当たりのいいところに置いといちゃいけないよぉ、チーズケーキなんてものを…。足が速いんだよ。ちょっと開けてみて、亜美」
「うわぁ…黄色くなって青くなって、毛がぽわーっと生えて……何か酸っぱそうな臭いがするよぉ?」
「ちょっとよしてよ、こっち持って来るんじゃないわよ…ほらほらほら、だめだよ…うわぁ…鼻にツンと来るねぇ、もうダメになってるよ。だめだよ、そのまま置いといちゃ、間違って食べる人が出かねないんだから、この事務所は。裏へ持ってって捨てちゃいな……っと、ちょっと待って、ちょっと……今からちょっと余興を見せましょう。いま、向こうから、伊織が来るでしょ? あの子にこれを食べさせちゃえばいいじゃない!」
「いくらなんでもそんなもの食べる?」
「食べるわよ、いまの律子さんのでパッと閃いたんだ。持っていきようひとつだよ、今度は私の独り舞台だよ。黙ってみてて、いい? あぁ……見てよ、あの光りっぷりを。デコの国からデコを広めに来たって感じだね。
伊織! ねぇ、ちょっと寄ってきなよ、無視はヒドイよ?」
「あら、春香じゃない。どうしたの?」
「まあ伊織、みんないるからこっちへ来なさいって」
「これはこれは、さえない三流アイドルの集まりね」
「相変わらず口が…。えーと、いっしょにお茶でも、どう?」
「いやあ、お邪魔になっては悪いしー?」
「いやいや、そんなことはないわよ。ほらほら」
「まぁ? そこまで言うんなら付き合ってあげてもいいわよ?」
「だって。さあさあ、伊織、ここに座って。イヤぁ、伊織はいつ見ても可愛いわねぇ。近頃バカな評判よ」
「え、私の噂? どこで?」
「どこもここもないわよ、もう業界中でバカな評判」
「あら、そうなの? ま、まぁ、それほどでもないわっ! にひひっ♪(キラーン)」
「いや、カメラのフラッシュじゃないよ、伊織のおデコが光ったのよ。…伊織、それにしても何か今日はやつれてない? あ、もしかして夕べ、プロデューサーと何かあったんじゃないの? 『夏の夜は短いわ…私、今夜は帰りたくない……』とかなんとか、プロデューサーにしがみついたりなんかして…」
「な、何言ってるのよ! そんなバカなこと…」
「またまたそんなこと言って。伊織、あなたは罪な人よ、これだけ野暮でモテないアイドルが雁首揃えてるってのに。伊織がそんなにモテるのも、色々美味しくて栄養のあるものを食べてその美貌を保ってるからでしょ? ねぇ、今日みたいに暑い日には、どんなものを食べてるの?」
「また変なことを聞くわねいきなり……。まぁ、最近はこの私の舌を満足させる食べ物にはとんと出会ってないわねぇ」
「そうでしょ、そうでしょ。そこがセレブの辛いところよねぇ。いや、今こうやって呼び止めたのは他でもないのよ、実はね、ファンから頂いたプレゼント、なんでもとっても高価な食べ物らしいのよ。それで、食通でないと分からないって言うのよ。伊織は、何かにつけて通人だから、ちょっと見てもらえない?」
「あら、うれしいわねぇ。じゃあちょっと見せてちょうだい」
「だってさ。持ってきて、持ってきて…。…え? ナニって、例の、棚へしまいぃの、鍵を掛けぇの、色が黄色いの、毛がポワァの……ああ、それそれ……うわぁ……。こ、これ……へ、へ、へっきし! ……へへ、これなんだけどね」
「……………? ………あ、あら、こ、このスイーツが……よ、よく手に入ったわねぇ?」
「伊織、随分顔から離して見てるわねぇ…で、これはやっぱり食べ物なの?」
「も、もちろんよ、にひひひひひひひひひぃ…」
「にひひひひひひひぃと来たわよ。で、伊織、これ食べたことはあるの?」
「あるの? 何言ってるの? 愚問ね。私なんかもう三回も」
「ああ、そりゃ良かったわ。じゃ、ひとつ、ここで食べて見せてよ」
「ここでって、それは…。あ、そうそう、そうよ、私一人で見せびらかすようにここで食べるのは失礼に当たるから、これを一旦家へ持ち帰って、ディナーの後のデザートとして食べるという事で…」
「いや、そんなこと言わないで。私たちはどうも食べ方さえ分からない始末で、ひとつ目の前で食べて見せてよ。ね、みんな頼みなさい。…ね、これだけお願いしてるんだから、ひとつよろしく頼むわよ」
「…あ、あらそう? まぁ、あんたたちがそこまで頭下げて頼むって言うなら仕方ないわねぇ、ではこの私が食べて見せてあげるわ。スプーンか何か貸してちょうだい…はいはい、うれしいわねぇ、ここでこういうものが食べられるという…なんと…ハックショイ!………この香りと言うものが……このスイーツの命なのよね……まず香りを楽しみましょう……ゲホッ……眼にピリピリと来るわね…この眼ピリ鼻ツンというのがなんとも言えず、この食べものの値打ちで……こう、スプーンで…ドロッとしてうまくすくえないところが、このまたおしゃれなところで……この抽象画のような色合いがなんとも食欲をそそるわね……ではいただきます………もぐっ…………。…………うっ!」
「伊織、眼を白黒して…床をバタバタ叩いて…ちょっと、だ、大丈夫!?」
「はぁ、はぁ、はぁ…いやぁ、個性的な味ねぇぇぇ〜!」
「あららら、この子食べたわよ本当に! で伊織、それはいったいなんて食べ物?」
「こ、これは……そ、そう、酢ケーキっていうのよ」
「酢ケーキ? ははは、うまいこと言うわねぇ、どうも……。ほら伊織、よかったら、もっと食べなよ」
「い、いや、その………酢ケーキは一口に限るわ」


解説

元ネタは古典落語「酢豆腐」。

ある夏の日に暑気払いに一杯やろうとした江戸っ子たちが相談の上、古漬けを肴に飲む事にしたが、臭い糠味噌の中に誰も手を入れたがらない。
そこにたまたま通りかかった半公をおだてて金を巻き上げる。するとそこで一人が夕べ買った豆腐の事を思い出したが、与太郎が夏の盛りだというのに鍋の中にしまっておいた為に腐ってしまっていた。すぐに捨てようと思ったが、ちょうどそこに通りかかった金持ちで気障で知ったかぶりでいやらしい伊勢屋の若旦那に食べさせることに。
若旦那はこれは「酢豆腐」という珍味だと知ったかぶりをしてその豆腐を食べたものの、案の定目を廻してしまう。「もうひと口いかがですか?」という勧めに若旦那、「酢豆腐はひと口に限りやす」。

アイマスのキャラで「気障な若旦那」に当てはまるのはやはり伊織しかいないだろうという事でこの配役が決まりました。
腐った物を食べさせるというのはちょっと残酷な気もしますが落語ですんで笑って許してください。それと、決して真似をしないで下さい(笑)
なお小鳥さんが千早に…というのは作者の趣味です。千早のCD「グラッティテュード・感謝」を聴いてたら、こういうのもいいかな、と思ったようで(お)。


元ネタ「酢豆腐」はこのCDで!


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